広告宣伝費や人件費は簿外資産として定期的に棚卸しする
広告宣伝費や人件費は簿外資産として定期的に棚卸しする
広告宣伝費や人件費など、会社のノウハウや新たなビジネスチャンスにつながる費用は、定期的に簿外資産として棚卸ししましょう。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
粉飾決算の典型的なパターンとしてよくあるのが、
本来費用として計上すべきものをきちんと計上せず、資産に計上する
というもの。
費用にしてしまうと、赤字決算になるというような場合に使われる方法です。
固定資産の減価償却費などをきちんと償却しないケースもこれに含まれます。
このようなお化粧をしている場合、資産を一つ一つ棚卸ししていくと、
- 実際の資産は会社が出している数字よりも少ない
- 時価に換算すると、実質的には債務超過である
ということになります。
一方で、本来費用として支出した中にも、
会社の隠れ資産として、その会社の価値を高めている
ものがあります。
例えば、広告宣伝費。
毎月100万円を広告宣伝費として投資する場合、決算書では販売管理費の中に、
広告宣伝費:1,200万円
と計上されて終わりです。
しかし、この広告宣伝を行うことで、
- 見込み客のリストが10,000人になった
- 結果的に5,000万円の売上が上がった
- どの媒体にどういう広告を出せば一番効果があるかが分かった
といったような成果があると、これは会社の新たな資産になっています。
これらの数字を資産計上することは会計上はいろいろと難しく、M&Aの際にもこれらの簿外資産をどう評価するかは議論の分かれるところです。
通常、期末や月末には、資産の棚卸しということで、在庫や設備が帳簿の数字ととあっているかをチェックします。
一方で、広告宣伝費のような費用に関しては、費用として計上して終わりになっているケースが大半です。
そこで、少なくとも会社のノウハウや新たなビジネスチャンスにつながる費用については、簿外資産の棚卸しを実施して、チェックしましょう。
例えば、ある月に、
広告宣伝費:100万円
を使って、新規に
見込み客リスト:1,000人
を獲得できた場合、
平均すると、見込み客の内5%が30,000円の商品を購入することが分かっていれば、
当月獲得したリストから見込める売上は
1,000人×5%×30,000円=1,500,000円
となります。
このため、会計上は、
広告宣伝費:100万円
を計上して、費用が▲100万円ですが、
見込み収益を勘案すれば、簿外資産として
(将来の)売掛金:150万円
が残ったので、差引きとしては
50万円
会社の資産が増えたという見方もできます。
費用の中には支払ったらそれで終わりというものだけではありません。
費用対効果を計測することを習慣づけるためにも、定期的な
簿外資産の棚卸し
は有意義です。
今は上場企業の社長になられている経営者が、「決算書には重大な欠陥がある」とおっしゃっていました。
その経営者曰く、「決算書では会社の大事な資産であるヒトが人件費という費用項目でしか表現されていない!」
このお話を聞いた当時はまだ株式公開を目指している段階だったのですが、会社は数年後に無事株式公開を成功されました。
人材を単に人件費として見るか、会社の大切な財産として考えるか
経営者の姿勢が問われる問題ですが、会社に対する評価はなかなかに奥が深いです。
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