資金繰りに関する事例研究
資金繰りに関する事例研究
「1,000万円ほどお金が必要なんだけど、資金繰りはどう?」 「先日お話のあったA社の案件ですね。その金額だったら、全く問題ありません。」 「わかった。」 「ところで、社長、Bさんと進めていた例の取引の方は大丈夫そうですか。」 「ああ、あれ。Bさんは今月中には間違いないと言ってるけど・・・。まだ、分かんないね。」 「そうですか。あれが決まれば資金繰りは随分楽になりますよね。」 「そうなんだ。ところで、俺個人の方も月末までにいろいろとお金がいるから、できれば会社への貸付金を一部でも返済に回せないかなあ。」 「昨年7月に実行した500万円だったら、すぐにでも返済できますよ。明日資金移動させましょうか。」 「いや、今度の金曜日にBさんと会うので、それを待ってからにしよう。もうちょっと頑張るわ。」
これは、先日私がある社長と交わした会話です。
当社は顧問契約しているこの会社に対して毎月1回月次の資金繰りの状況をまとめ、社長に報告しています。
この会社では毎月の定期的な売上はありませんが、いくつかのプロジェクトを同時並行で進めており、私が訪問した際に必要に応じて資金管理に関する打合せをやっています。
社長は私が尊敬する経営者のお一人で、時には私もちょっとびっくりするようなリスクのある業務にも果敢に挑戦されています。
一方で、資金繰りに関しては慎重の上にも慎重を期されており、経理や会計にはそれほど詳しくない方なのですが、資金管理のポイントは決して外していません。
私が経営の先輩として見習っているのは次のような点です。
毎月の支出金額を把握し、最低1年間は売上ゼロでも大丈夫かを毎月確認している。
必要な経費はきちんと支払うが、無駄な出費はないかを定期的にチェックしている。
不確実な売上については、たとえ契約が終っていても実際に入金があるまで当てにしない。
フリーに使えるお金は、将来の収益のために何に投資すべきかを常に考えている。
手元の預金残高が減ってくると、目の色を変えて収益を上げることに集中している。
この会社は金融機関からの借入はありませんが、元銀行員の私から見ても、安心してお金を貸せる先と言えます。
こんにちは、私はヒーズ株式会社代表取締役の岩井徹朗と申します。
私は大手都市銀行、インターネット専業銀行、ベンチャー企業での勤務を経て2006年7月に起業しました。
中小企業の社内体制構築の支援をメイン業務とし、公認内部監査人(CIA)として上場企業の内部統制報告制度に関するコンサルティングなども行っております。
さて、最近本屋さんに行くと、決算書、財務諸表、資金繰りに関する様々な本が並んでいます。公認会計士や税理士の先生、元銀行員や財務部出身者の方が書かれたものなど多種多様です。
「これからの経営者は決算書ぐらい読めないと駄目だ!」 「きちんとした経営にはB/S、P/L、キャッシュフロー計算書の理解が必須。」 「資金繰り表は経営の要です。」
という宣伝文句にひかれて、勉強熱心な方は既に何冊もお読みになったのではないでしょうか。
とても分かりやすく書かれた本もあり、仕事柄私も時々参考にさせてもらっています。
経営者は貸借対照表や損益計算書は理解できた方が良いという点では私も異論はありません。
また、私も銀行員時代には、融資を申し込みに来られた社長さんに
「資金繰り表はちゃんと作って提出して下さい。」
とお願いする立場でした。
しかし、多くの経営者は、資金繰り表を作ったり帳簿とにらめっこするよりは、お客さんのところへ行って商談したり、ご自慢の技術を使って新製品開発に取組んだりと、経理や財務といった管理業務以外の仕事を得意とされているのではないでしょうか。
中にはお金に関することや銀行との交渉は経理部(財務部)任せ、
税金のことは顧問税理士の先生に丸投げ、決算書は会計士の先生が期末にきっちり作成するので安心、という経営者もいらっしゃるかもしれませんね。
現実問題として、営業大好きな社長、技術畑出身の経営者が
・資金繰りについて継続的に危機感を持つこと、
・早めの資金確保に向けて具体的な行動を起こすこと
はなかなか簡単なことではありません''。
誰しも得意、不得意はあるもの。
ましてや人材が限られている中小企業では、社長が得意分野にいかに時間と労力をかけられるかが、業績向上のカギを握っていることが多いことはよく理解できます。
しかし、会社の業績が順調な時はさほど問題にはならないのですが、
定期的に資金繰りをチェックしている経営者の会社と、
日頃はお金と正面から向き合っていない経営者の会社とでは
中長期的に見ると大きな差が出てくる
のは紛れもない事実です。
そして、会社が事業を続けていくための資金管理については経営者が最終的な責任を負っています。
お金が回っていくかどうか、会社が倒産するかどうか、という厳しい状況の時に矢面に立たなければならないのは他ならぬ経営者ご自身なのです。
経理担当者が資金繰りの件で社長であるあなたと打合せしようとした際、
「何とかするから、安心しろ。」 「この製品が完成すれば、大丈夫だ!」 「俺には秘策がある・・・。」
などど言ってなかなか資金繰りの改善につながる具体策を示せなかったことはありませんか?
一方、本当に資金繰りが逼迫した時には
「なぜ、もっと早く俺に知らせないんだ!」 「経理部長でありながら、今まで何をやっていたんだ!」 「お前がなんとかしろ!」
と社員をどなりつけたことはないでしょうか。
これでは、事前に何度も相談にいっていた社員にしてみれば、
「だからあの時注意したでしょう!」 (上の空で人の話を聞いていなかったくせに・・・。) 「何とかするからって言っていたのは嘘だったのか・・・。」 (信じた自分がバカだった・・・。) 「切り札だった例の製品はどうなったのですか?」 (いったいどこまで進んでいるんだ!)
と、正直やりきれない気持ちになってしまいます。
そして、優秀な部下が一人、また一人と辞めていき、気がつくと社長の周りには誰もいなかったということにもなりかねません。
では、会社がきちんと事業を続けていくために、また、資金繰りの悪化によってぎすぎすした職場になることを未然に防ぐために、きちんと資金繰りに向かい合うために経営者は何をしたらよいのでしょうか。
経営者に必要なことは最低限二つあると私は考えています。
それは、
必要なお金は足りているかということを見極める目を持つこと
そして
お金が足りない場合にはあらゆる必要な手段を講じる
という行動力を持つこと
です。
冒頭にご登場いただいた社長は、間違いなくこの目と行動力を持っておられます。
ご自身のビジネスに関連する事項についてはとても熱心に研究されていますが、私はこの社長が経理や財務、資金繰りに関する本を読んでいるのを1度も見たことがありません。
決算書は契約している会計事務所が作成し、決算を締める前に半期に1度報告を受けるだけ。
しかし、少しでも資金繰りが危うい兆候を発見するや否や、いわゆるスイッチが入ったように仕掛り中の案件を猛烈な勢いで詰めていくのです。
これが既に10年近くきっちりと事業を続けておられる秘訣だと私は感じています。
では次に、忙しい経営者が最低限必要な資金管理を行う目を養い、必要な行動を起こす環境を会社の中に作るためにはどうしたらよいでしょうか。
せっかく部下が相談しようとしても
「経理や会計のことはよく分からん。」 「机の前に座っているのは嫌いなので、なるべく簡単に経営管理をやりたい。」 「毎月の売上高が安定していないので、資金繰り表を作ってもなあ・・・。」
といろいろと難癖をつけて、資金繰りに関する話が一向に進まないという社長さん。
一方、頭の中では
「C社は最近業績が悪いようだが、月末分はちゃんと払ってくれるのかなあ・・・。」 「昨年は思ったよりも税金の金額が多くて正直ひやひやもんだった。」 「銀行の担当者が替ってから、あまり銀行には顔を出してないけど、3月末の借入は減額されないだろうか・・・。」 「来月中にはあの商品を仕入れたいだけど、資金繰りは大丈夫かな?」
といろいろな不安がよぎっているという経営者の方。
弊社は、超キャッシュフロー経営を通して、1,000社の会社が設立されても20年後には3社しか生き残れないと言われている会社の生存率を20年間で10倍の3%にすることを目指しています。
どんなに素晴らしい経営理念を掲げようとも、また、いかに画期的な技術を持っていたとしても、それだけでは事業を続けていくことはできません。
会社を続けている以上、資金繰り、資金管理の問題は避けては通れない課題です。
もし、今までお金の問題と正面から向き合ったことがないようであれば、まずは会社の資金繰りの実態を把握してみてはいかがでしょうか。
社長であるあなたが資金繰りに関する正確な情報を
しっかりと認識することで状況は大きく変わります。
そして、社長と経理担当者が冒頭にあったような会話を定期的にできるようになればしめたもの。
ちょっとでも資金繰りに不安があれば、あなたは経理担当者に言われなくても自ら積極的に動いているはずです。
1日でも早く会社にキャッシュフロー経営を定着させ、必要な資金管理を実現し、厳しい経済環境の中、資金不足を乗り切って、事業を継続・発展させていきましょう。
ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井 徹朗
★「超キャッシュフロー経営」実現のための100の実践チェックリストの詳細は「こちら」です。
Tag: 資金繰り 資金繰り表 キャッシュフロー経営