決断する重みに耐え、悔いなく生きてこその経営者
決断する重みに耐え、悔いなく生きてこその経営者
経営者として譲れない一線をどこに引くかに正解はありません。だからこそ、経営者の決断で問われるのは、「自分として悔いはないか」です。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
今週「専門コラム」で100億円企業の話を書いたところ、その後、実際に100億円企業の経営者のお話を聞く機会がありました。
たいへん中味の濃い内容だったのですが、キャッシュフロー経営の観点から一番印象に残ったのは、売上高No.1の取引先を切れるかどうかというエピソードです。
当時月商で1億円以上の取引があった先から、「社内でプロジェクターを購入する稟議を上げたが通らなかった」ので、ついては、「そのプロジェクターを寄付してもらえないか」という依頼がありました。
そして、この100億円企業は物流会社なので、その取引先からは「寄付してもらうプロジェクターの分は運賃に上乗せして請求してもらってもよい」という申し出でした。
もし、あなたが、一番売上高の多い取引先からこのような申し出があった時、どのように対応されるでしょうか。
キャッシュフロー的には、寄付する分も売上として回収できるので、特に大きな問題ではありません。
しかも、依頼のあったプロジェクターの価格は40万円ぐらい。月間の取引高からすれば、なんとでもなりそうな感じです。
結論から言うと、その社長さんは取引先からの申し出を断りました。
すると、先方からは「ウチとの取引を止めてもいいのか?」ということを暗に匂わされました。
会社で一番の取引先を失うかもしれない危機に、幹部社員たちは「社長はなんで、先方からの申し出を断るんだ!」と猛反対。
けれども、その社長は
- 稟議が通らなかったということは、取引先の経営陣がそのプロジェクターは要らないという決断を下したということである
- それなのに、他の会社が別な方法を使って、プロジェクターを渡すということは、決断を下した経営陣に対して、反旗を翻すことになる
と主張し、先方にも説明に行きました。
結果的には、取引先も納得され、今でもその会社との取引は続いているそうです。
会社を続けていくには、キャッシュフローを回していくことが大事です。
そして、キャッシュフローを回していくにためには、今の売上をどうやって維持し、更に伸ばしていくかがポイントになります。
この点から言うと、言い方には語弊がありますが、
たかが40万円あまりの出費のことで、月間1億円の入金を失っても良いのか?
ということで言うと、かなり勇気のいる決断です。
しかし、お話を聞いていて感じたのは
この勇気ある決断をされた経営者だからこそ、創業30周年を経て、年商100億円の企業を育てられた
のだということ。
経営者として譲れない一線をどこに引くか
これは、かなり難しい問題です。
そして、譲れない一線をひく場所に正解はありません。
だからこそ、経営者の決断で問われるのは
自分として悔いはないか
です。
特に社員もいる会社の場合、「会社が倒産して、社員を路頭に迷わすことはなんとしても避けたい」と考えておられる経営者はたくさんおられます。
だから、業績が悪くなった時に、社員の給料を下げるという決断をしなければならないことだってあります。
また、全社員の雇用を維持するのが難しくなってきた時、社員の数を1/3に減らすという決断を下すこともあります。
一方で、頑張って給料も雇用も維持すると決断する経営者もおられます。
世間的には、最後の頑張って給料も雇用も維持する経営者が称賛されます。
しかし、たとえ世間がなんと言おうとも、
自分が正しいと信じる考えに沿って下した決断を結果の如何に関わらず経営者本人は認める
ことが出発点です。
先の100億円企業の社長さんがおっしゃっていたのは
「判断するのは社員でも経験を積めばできるが決断するのは最終的には経営者だけ」
決断する重みに耐えられてこその経営者なのだと、改めて気づかされた気がします。
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