資産の換金価格と所要時間
資産の換金価格と所要時間
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
会社の資産を見直してみると、思わぬ含み資産が出てきて、資金繰りを改善できたということがあります。
昔から持っていた土地が、新しく近くに駅が出来て便利になり、帳簿の価格より3割以上高い値段で売却できた
とか、
工場の片すみに積まれていた鉄くずが原材料の高騰の影響で、思わぬ高値で処分できた
という事例もありました。
一方で、気をつけたいのが、資産を換金した場合、いつ、いくらの現金が手元に戻ってくるかという点です。
例えば、「保証金」。
経費削減の一環として家賃の安い事務所へ引っ越そうと検討される会社もあるかと思います。
引越し後は毎月の家賃が安くなるため、資金繰りが改善します。
けれども、引越しする前は、新しい事務所への保証金、当初の家賃前払い、引越し費用などが発生するため、一時的に出費が膨らみます。
現事務所の家主さんに預けている保証金は戻ってくる訳ですが、そこにはタイミングのズレと金額のズレがあります。
実際、あるクライアントさんが事務所を移転される際に賃貸借契約書を見せていただくと、
「解約の申入れの日より3ヵ月据置き後、賃貸借物件を完全に明渡しの上、(借主が)負担すべき一切の債務を完済した後に保証金を返還する。」
「償却金として保証金の10%相当額を差引いた残金を返還する。」
とありました。
つまり、仮に決算書に「保証金:300万円」と載っていたとしても、実際に手元に返ってくるのは最大でも償却分を差引いた270万円です。
しかも、原状回復費用などは基本的には借主負担なので、事務所を借りる際にいろいろとレイアウト変更していると、その回復費用が別途引かれてしまいます。
また、資金繰りが厳しくなっている家主さんの場合は、実際に保証金が戻ってきたのは次のテナントが決まってからだったという話も聞きます。
幸い、私のクライアントさんの場合は、原状回復費用もほとんどかからず、家主さんも非常にしっかりとした方だったので、最終的には契約書通りの金額がきちんと戻ってきました。
しかし、当初あてにしていたお金が予定通りに戻って来ないということは実際には充分にありうることです。
会社が借主の場合、保証金も月額家賃の半年分だったりするなど、ある程度まとまったお金になります。
このため、決算書や帳簿に載っている保証金が
- 実際にはいくらの現金になるのか
- いつ頃資金化できるのか
は事前でつかんでおいた方が良いのではないでしょうか。
そして、それを把握するためには、やはり
- 賃貸借契約書をもう一度よく見直す
- 原状回復にかかる費用を概算で見積もっておく
- 家主さんに関する情報も最低限はつかんでおく
ことが必要となってきます。
資産は急いで換金しようとすると、たいてい買い叩かれます。
銀行交渉の準備段階でも、資産を換金した時の価格と換金にかかる時間をできるだけ把握しておきましょう。
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